[事業用不動産を買う]  
不動産を購入するときの基本的な注意事項は居住用物件の購入の項目でご説明しましたので、ここでは特に事業用物件を購入するときのポイントをご説明いたします。

   →投資効率   →再売却    →サブリース
1.使用目的と用途地域は適切ですか
都市計画法の用途地域と使用目的が合致しない場合は、建物の建築許可が得られませんので注意が必要です。
2.使用目的を満足する設備は確保できますか
例えば、マンションの1階の店舗を購入する場合、その使用目的に必要な設備が建物に備わっていないと設備を設置するのに多額の費用がかかってしまったり、使用目的が果たせなくなってしまったりしますので、事前の調査が必要です。
3.投資の場合の投資効率はどのように計算していますか
不動産からあがる賃料を目的とする投資物件を購入する場合、その投資効率を計算する必要があります。その計算方法を以下に簡単に示します。どの計算方法による投資効率なのかを見極めませんと、購入価格の査定や購入の決定に影響を与えます。
@表面利回りと正味利回り
日本の不動産業者や金融機関などで一般的に行われている計算方法です。簡単な割り算で計算できますので、素人目にも分りやすいですが、投資の基本理論からすると不正確です。目安として考えればよいと思います。
@.表面利回り
購入物件から得られる賃料などの年間収入を購入価格で割ったパーセント表示です。とても簡単な計算でよく使われていますが、賃料が高くても固定資産税や管理費用が高ければ思ったほど手元にお金が残らないということになります。
A.正味(ネット)利回り
収入から固定資産税や管理経費を差し引いた残高を購入価格で割ったパーセント表示です。この計算ですと手元にいくら残るか推察できますので資金計画も建てやすくなります。然し、売却物件の管理経費はどこまで開示されているかに疑問があります。売主が故意に情報を提示しないばかりでなく、どんぶり勘定の収支のため売主自身が管理経費等を把握していない場合もあるのです。米国ではデューディリエンスにより全ての管理経費を把握します。デューディリエンスには、単に管理経費や税金だけでなく、建物や設備の状態や長期補修費用の予測、テナントの質、賃料の滞納とか退去予定などのリスクも計算に入れています。日本の不動産投資理論はまだ立ち遅れているといわざると得ません。
ADCF法による収益還元法
前記の利回り計算は、購入時点のみでの考え方ですが、賃料は将来にわたって入ってくるものですし、その将来は一年ごとに変化しているものです。ここで一年 間の割引率を設定して将来の各年の収入を現時点に割り戻します。また購入した物件を将来(例えば10年後)売却した場合の価格を推定し、その価格を割引率で現在価格に割り戻します。このようにして得られた収入や売却価格の現在時点価格の総額が、購入価格の投資物件としての評価額となります。この評価額と購入価格との比較により、投資物件の購入を判定する方法が米国では標準となっています。このような手法はDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー)といいます。然し、残念ながら日本ではまだ一般的ではありません。DFC法の詳しい内容は各種専門書をご参照ください。
4.テナントの賃料は安定的ですか
購入予定物件に空き室はありますか。あればなぜ空いているのでしょうか。また、入居中のテナントの賃料は滞納なく支払われているでしょうか。入居者に暴力団とか特殊な宗教団体は入っていないでしょうか。このような情報は可能な限り購入前に取得して、リスクとして把握しておく必要があります。
5.テナントが出た場合は同じような条件で速やかにテナントを確保できますか
現在の賃料は過去に契約した時点での賃料を引きずっている場合が多いものですから、現在の賃料相場とかけ離れている場合があります。バブルの頃に入居したテナントが余り賃料交渉もなく入居していれば、当然今の賃料相場より高い賃料となっているわけです。もし、そのテナントが退出すれば次の募集賃料は低くならざるを得ません。更に、現在のテナント募集動向によりますと相場の賃料でもなかなか入居者が見つからない現状です。入居者が見つかるまでの空き期間のリスクを計算に入れる必要があると思います。
6.将来再度売却可能な物件ですか
日本では購入した不動産は孫の代まで永久に持つという風土がありますが、米国の不動産投資の基本的な考え方は、購入した物件は将来適当な時期に売却するというものです。将来売却する予定がなくとも、万一売却する場合は売却しやすい物件であるほうが良いわけです。よく、地方都市でしかも郊外の投資物件は利回りが10%以上回るから投資効率が良いと購入を勧められることがありますが、万一、テナントが出た場合に同じような入居者は決まるのか、また、売却の際は買い手があるのかを検討すると、リスクのほうが多くなるケースが多々あります。10年後、20年後の日本の将来経済を見据えた投資計画が必要となります。大都市東京であればどこでも良いかといえば、そうでもありません。経済縮小の現在、東京でも全体的に縮小していますが、勢いがついて伸びているところもあります。 銀座とか青山などの商業地の地価や賃料は上方傾向となっている所もあります。また、港区の住宅地も横ばいとなってきました。当社は不動産情報のご提供だけでもご協力させていただきます。
7.サブリースは大丈夫ですか
サブリースとは、購入した投資物件を一旦管理会社や不動産会社が賃借し、その不動産会社が元賃料に営業費用と利益を乗せた賃料で第三者に転貸するものです。投資家は不動産業者より安定的な予定賃料が得られたり、テナントとの煩わしいトラブルに関りあわなくて良いメリットがあります。然し、サブリースする不動産会社や管理会社が倒産したり、賃料を支払わなくなった場合とか、テナントがなかなか付かないといって賃料の値下げを要求してくる場合もあります。最近の裁判所の判例では、市場の賃料相場が下がった場合は、サブリース賃料の値下げを裁判所が認めています。従いまして、サブリースだからといって、永久的に安定的な賃料が入ってくるという安心感はなくなってきています。