[事務所・店舗・倉庫を借りる]  
事業用物件の賃貸借は居住用物件と大きく違うところがありますので注意して下さい。
●事務所の賃貸借契約で注意すべきポイント    →店舗のポイント
1.契約面積;
賃貸借契約の表示面積は、事務所として専用使用できるスペースの面積とすべきですが、エレベーターホールや建物玄関など建物の共用部分の面積の一部を加えている場合があります。賃借した事務所に机などの家具の配置をする際に、使用できる面積が契約面積より少ないと気付く場合があります。賃貸借契約時に契約面積の内、専有面積(実際に事務所として使用できる面積)と共用面積(廊下などの面積)を区別して表示してもらうようにしてください。賃料が坪単価で募集していた場合は、特に議論されるべき問題となります。
2.共益費;
賃料に共益費が含まれるという契約の場合はあまり問題になりませんが、賃料と共益費が別に賃貸借契約で書かれている場合は、その共益費は何に使われる費用なのかを明確に確認して置いてください。時々、エレベータもなく清掃も月に一回程度しかやっていないのに、共益費一万円は高いのではないかというクレームがあります。分譲マンションなどでは、管理費は区分所有法でその収支を年に一度、管理組合の総会で明示しなくてはなりませんが、賃貸ビルの場合は、ビルオーナーが適当な共益費を設定してその使途を明らかにしないことがほとんどです。今後法整備が必要な分野だと思いますが、事務所を借りる場合に家主に共益費の使用明細を聞いてておくことは必要です。
3.電気水道費用;
電気料金は、ビルに大元のメーターがあり電力会社から電気料金の請求がビルオーナーに来ます。ビルオーナーは各貸室に設置されています小メーターから各々の電気使用量を計算し、各事務所テナントに電気料金の請求をします。この際、1〜2割の上乗せをして電気料金を請求することが多いようです。ビルオーナーとしては、常時全室がテナントで満室になるとは限らないので、空室が出た場合のことを考えて上乗せ計算をしていると説明します。もし空室が出た場合に各テナントで電気料金を配分すると通常より多額の電気料金の請求となってしまうとの説明です。ビルオーナーの説明も一部うなずけることもありますが、借りる事務所の電気料金の計算方法を賃貸借契約の際に確かめておく必要はあると思います。そして、いざ入居して想像以上に電気料金が高いと感じましたら、ビルオーナーにその計算方法を確認して、最悪の場合は訴訟も辞さない態度で交渉してください。水道料金につきましても、上記電気料金と同じとお考え下さい。
4.解約通告期間;
居住用物件の解約通告期間が1ヶ月位であるのに対し、事務所などの事業用物件は、6ヶ月とか、12ヶ月が多いようです。解約届け日からこの通告期間中は賃料を支払わなくてはなりませんから、とくに賃貸借契約をする際は注意をしてください。賃料交渉する際に、この解約通告期間もなるべく短くするように交渉すると良いでしょう。
5.原状回復費用;
居住用物件の原状回復では、自然磨耗等は賃料に含まれると解釈され、テナントの故意過失による汚れや破損のみその修理費用をテナントの負担としますが、事務所の場合は、解約して明け渡し後、室内の壁紙や床材を全て取り替え、その費用負担を全てテナント負担とすることが多いようです。 事務所の賃貸借契約にあらかじめ原状回復費用は全てテナント負担と書かれているものもあります。自然磨耗の修理費用は居住用、事業用を問わず家賃に含まれる、即ち家主の負担とすべきとかんがえられますので事務所についても原状回復費用を全額テナントが負担する必要はないと思われますが、現状の取引ではテナントに負担させていることが多いようです。今後の課題だと思われます。 賃貸借契約の際はその負担分担をよく確認して署名捺印してください。
6.使用日時の制限;
ビルによっては、空調機の運転時間や管理人の勤務時間などビルの管理上、事務所の使用日時に制限を設けている場合があります。IT産業など24時間事務所を使用する業種の場合、特に使用日時の制限については事前に確認をしてください。
●店舗の賃貸借で注意すべきポイント     →事務所のポイント
店舗の賃貸借では、上記の事務所と同じ注意事項のほかに、店舗としての特殊な内容もありますので、その主な注意点を以下に記します。
1.テナントの種類;
店舗は、ブティックや本屋などのショップと、ラーメン店やレストランのような飲食店に大きく分けられます。この内、家主やビル管理会社より飲食店は使用不可という場合が多く見受けられます。あなたの業種は大丈夫なのか、あらかじめこのような使用制限を確認しておきましょう。
2.内装造作譲渡;
店舗の内装は、基本としてテナントがテナントの費用負担で行います。従ってその内装造作の所有権はテナントにありますが、解約して物件を明渡しする際はその内装造作を全て撤去しなければなりません。一般的な賃貸借契約では、その内装造作を家主に買取ってもらうとか、第三者に譲渡することは禁止されています。しかし、例えば2000万円かけた内装造作がまだ十分使用可能の場合、明渡しの際に500万円でも買いたいという方がいれば譲渡したいと思うこともあろうかと思います。このようなことを想定して、賃貸借契約の際にあらかじめ家主から内装造作譲渡の承諾を書面でもらってておくことが出来れば解約の際に家主とトラブルが起こらなくて済みます。家主には造作譲渡を認めてもらう代わりに、譲渡代金の10%位を譲渡承諾料として支払うことなど家主にもメリットを与えて、内装譲渡の承諾を説得してみましょう。更に家主にメリットのある点は、テナントが次のテナントを見つけてきて賃貸借契約を差し替えるわけですから、家主からすれば賃貸借契約の空白がなく賃料が連続して受け取れるということも付け加えて説得しましょう。然し、家主から見たデメリットとして、内装造作譲渡を一度認めると、テナントから次のテナントへ譲渡が繰り返され、ほぼ永久的にその物件は家主の下にもどってこないということもあります。従って、家 主がいつか自分でその店舗を利用したいと思う場合は内装譲渡を認めづらいと考えられます
3.原状回復;
店舗の場合の原状回復とは、内装造作を全て撤去して、建物の躯体をむき出しにした状態(スケルトン渡し)とすることが基本です。然し、物件によりその現状は違いますので、賃貸借契約の際、原状とはどの状態をいうのか良く確認しておく必要があります。 
4.設備のチェック;
店舗はその使用目的によって、動力も含めた電気容量、ガス供給容量、給排水管の位置と太さ、エアコンの室外ユニットの設置場所、看板の設置できる場所、排気ダクトの経路など関連設備のチェックが必要です。特に排気は重要で、料理によっては臭いとか煙が近隣住民から苦情が来ることが多くあります。事前にその予測をして消臭などの設備を検討しなくてはなりません。また、貸主が了解しても、その店舗が区分所有の物件であった場合は、管理組合の承諾がなければ営業できない場合もありますので、あらかじめ管理規約に目を通し、管理組合の理事長とよく相談しておく必要もあります。